萎縮性胃炎


ここ最近頻繁に胃がムカつくなど悪心が酷く、食欲が減衰していた。当人としては、これは加齢によるもので年相応に枯れてきたのだろうとかその位に考えていたが、久方ぶりに健康診断を受けたところ、萎縮性胃炎との診断結果を賜った。何となく漠然とした体調不良に名前が付くというのは有り難いことである。

話は少しずれるのだが、ここ最近は「ピッコマ」という待てば無料で読める漫画サイトを毎日活用している。以前、こういう対価を払わずに作品を楽しむことに罪悪感があるみたいな事を書いた記憶があるが、今は昔。俺は羅生門の婆の心を装着したのだ。貧すれば鈍す。

さて、そこで人気になる作品には特徴があって、主人公が不慮の死を遂げる瞬間、異世界に転生(転移)する感じの物が著しく多い。これ系の作品を一日あたり40作品くらい読んでいる。お陰様で多忙である。それで何が言いたいかと言うと、そういう系の異世界では、名前のない対象に名前を付ける行為が、その世界では殊更特別な事象として捉えられている事実を、俺はピッコマに教えられたのです。だから名もない体の不調に対して、お医者様が「萎縮性胃炎」と名を授けてくれたことは特別であり、きっとチートスキル?を神様から与えられたみたいな?物だと名前を与えられた瞬間に直感したのだった。

そこで俺は手元にあるアーティファクト(XperiaXZ3)を用いてスキル「萎縮性胃炎」を鑑定してみたのだが、これが恐ろしい程のとんでもチートスキルであることが分かってきた。なんとこのスキルは出世魚のようにどんどん成長するのである。初期の段階では「急性胃炎」、スキルを活用していくとパワーアップしていき、次は「慢性胃炎」、更には「萎縮性胃炎」となった後に間にもう一つ挟んで「胃ガン」になる!とか書いてあった!や、や……やばみがすごい!!!とりあえず最終形態まで育っちゃうと俺には扱い切れなさそうなので、近くの賢者(医者)に相談しに行きたいところなんだけど、何はなくとも先立つ物がなければ賢者は会ってもくれないらしい。賢いくせに金にがめついとか、私の元いた世界の倫理観に照らし合わせるとにわかには信じられないが、それがこの世界の理なのだと聞いたことがある。誰かに。だから俺はその違和感はぐっと飲み込んで(萎縮性胃炎のスキルが飲み込むのを阻害するが)、まずはギルドに行って、自分でもこなせそうな依頼票を手にとってお金を稼ぐことから始めるとするぜ!ここから始まるだろう、のんびり異世界ライフに今から胸がムカムカしてる!